スール州

スール州

Sool
سول
ラス・アノド(2011年)
ラス・アノド(2011年)
ソマリランド南東部のスール地域の場所
ソマリランド南東部のスール地域の場所
スール州の位置
スール州の位置
北緯8度23分46秒 東経47度41分29秒 / 北緯8.39611度 東経47.69139度 / 8.39611; 47.69139
ソマリアの旗 ソマリア
実効支配 ソマリランドの旗 ソマリランド
州都 ラス・アノド
面積
 • 合計 25,036 km2
面積順位 14位
人口
(2014年推定)
 • 合計 327,428人
 • 順位 18位
 • 密度 13人/km2
等時帯 UTC+3 (EAT)
ISO 3166コード SO-SO

スール州(スールしゅう、ソマリ語: Soolアラビア語: سول‎)は、ソマリア北部に位置する州(gobol)のひとつ。北をサナーグ州、東をバリ州・ヌガール州、南をエチオピアソマリ州オガデン地方)、西をトゲアー州と接する。州都はラス・アノド。人口は約33万人(2014年推定)で、ソマリアの州の中では最も少ない[1]。主にソマリ族の一氏族であるダロッドが住んでいるが、北西部にはイサック氏族が住んでいる。

近隣のサナーグ州(Sanaag)、アイン州(Cayn、トゲアー州東部)と共にSSC地域と呼ばれている。SSC地域をめぐってソマリランドプントランド武力衝突を繰り返しており、また、住民がソマリランド及びプントランドからの独立の動きを見せており、情勢が不安定な地域としても知られる。2018年時点ではソマリランドがラス・アノドを含む大部分を、州東部をプントランドが実効支配している。なお、「アイン州」はプントランド及びSSC地域独立派の呼称であり、ソマリランドでは通常使われない。またソマリランド[2]およびプントランド[3]はスール州の一部のみを「スール州」としている(していた)が、ここでは主にソマリアの行政区画を説明する(#ソマリランド、プントランド節を参照)。

歴史

ソマリア内戦後の勢力図

昔から、住民の多くはデュルバハンテ氏族であった。

独立以前はイギリス領ソマリランドに属していた。サイイド・ムハンマド・アブドゥラー・ハッサンの独立運動によって建国されたダラーウィーシュ国の首都タレーは州東部にあった。しかしダラーウィーシュ国は間もなくイギリス軍およびイサック氏族により滅ぼされた。独立後の1980年代にヌガール州より分離[4]

ソマリア内戦勃発後の1991年、ソマリランドが独立宣言し、スール州の住民からも代表が送られた。しかし間もなくソマリランドの主要氏族であるイサック同士の内戦となり、非イサックの地であるスール州はソマリランドと距離を置くようになった。1998年に東のバリ州・ヌガール州にプントランドが成立すると、スール州の住民はプントランドにも代表を送った。ソマリランドとプントランドの両国はSSC地域をめぐって武力衝突を行うようになった(プントランド・ソマリランド紛争)。

当初は支配氏族が近いプントランドがスール州のほとんどを実効支配していた。2000年代前半には、ヤゴリなど少数の町を除いて、スール州のほとんどはソマリランド選挙に参加していなかった。ソマリランド選挙委員会が2005年に送った事実調査団の報告によると、その理由として、ソマリランドの行政機関がほとんど存在しないこと、町によってはプントランド国軍が駐留していたことなどが挙げられている[5]

2003年頃からソマリランドが優勢となり[6]2007年にはラス・アノドを占領するに至った[7]。2018年ソマリランドがプントランドの支配下にあったトゥカラクを占領し、双方が非難するなど現在もスール州の争奪戦が続いている[8][9]

現地住民のデュルバハンテ氏族はこの紛争に抗議しており[10]、現状からの解放と自治を求めてノースランド国(2008年)、チャツモ国(2012年)が建国された[11]。しかし、ソマリランドとプントランド両国の攻撃によっていずれも消滅している。

地区

4つの地区(県、Degmo)から成り立つ[12]。カッコ内はソマリ語名。

主要都市

a. ワリダド b. ベルカド・アリ・ヘルシ c. クオリヘーレ d. ゴウサウェイン e. ゴドヘーリ f. ボホル g. フドゥン h. サルマーニョ i. ガウロ j. タレー k. ダランタレー l. ハリン m. ワダマゴ n. アイナバ o. ハバリヘシャイ p. セールダーブ q. オーグ r. バドウェイン s. ヤゴリ t. アディカデエ u. ラス・アノド v. ガンバレ w. トゥカラク x. ボアメ (y. ガローウェ) z. ドゥマイ aa. カラバイド ab. バラン ac. ダルカイン・ゲーニョ ad. サーヘール ae. カリン・ダバイル・ウェイン af. コリレイ ag. カリン・ゴルフォード ah. ファーディディン

ソマリランドのスール州

スール州(ソマリランド)
2002年のスール州
2002年のスール州
2008年以降(スール州は10番)
2008年以降(スール州は10番)
政府 ソマリランドの旗 ソマリランド
設置 2002年
州都 ラス・アノド

ソマリランドでは、2002年に制定された地方行政法によってスール州が設置されている[2]。設置当初はソマリアのスール州と領域は変わらなかったが、2008年に当時のダヒル・リヤレ・カヒン大統領によって州西部の三角形の地域がサラル州 (Sarar)(スウェーデン語版)サラル州 (Salal)(スウェーデン語版)とは異なる)として分離[13]。2014年6月にはアフメッド・シランヨ大統領によって州東部がハイシモ州(英語版)として分離した[14]。州都は一貫してラス・アノドに置かれている。

地区

2002年の法案によれば6地区が設置されている[2]。現在は一部変更が行われている[13]

地区名の上付き文字は2002年法案による地区の格付けによるもので、最高のAからDの4つに分類された。スール州にBに分類された地区はない。

プントランドのスール州

スール州(プントランド)
政府 プントランドの旗 プントランド
設置 1998年7月24日
州都 ラス・アノド

1998年7月23日に成立したプントランドは、領土を5つの州に分割することを発表し、ラス・アノドを州都としてスール州が設置された[17]。州域はソマリランドのスール州(2008年のサラル州分離後)と等しい。

現地住民と氏族が同じであったため当初は大部分が実効支配下にあったが、インフラ整備などを怠ったため次第に住民の不満が高まった。2007年にラス・アノドを失い、2008年にはスール州の有力一族の長老がプントランド政府に見切りをつける[18]など厳しい状況が続いている。

スール州には石油が埋蔵されていると推定されている。

脚注

[脚注の使い方]

出典

  1. ^ “Somalia:Pre-war Regions”. Citypopulation (2015年11月3日). 2018年3月11日閲覧。
  2. ^ a b c “JAMHUURIYADDA SOMALILAND XEERKA GOBOLLADA IYO DEGMOOYINKA: XEER LR. 23/2002 (& 2007 ) REGIONS & DISTRICTS LAW: LAW NO: 23/2002 AS AMENDED IN 2007”. 2019年3月12日閲覧。
  3. ^ “Puntland/About”. プントランド政府. 2019年3月12日閲覧。
  4. ^ “Regions of Somalia”. Statoids.com (2015年9月1日). 2019年3月11日閲覧。
  5. ^ Academy for Peace and Development (2021年5月). “A VOTE FOR CHANGE: Somaliland’s Two Decades Old Electoral Democracy”. 2021年7月24日閲覧。
  6. ^ “Somalia's Puntland Sold Exploration Rights In Somaliland”. Somaliland Times. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月12日閲覧。
  7. ^ “Somalia: Somaliland unable to control mass exodus out of Las Anod”. ガローウェ・オンライン (2007年10月23日). 2007年10月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月12日閲覧。
  8. ^ “Somaliland forces take control of town from Puntland in northern region”. 新華社通信 (2018年1月8日). 2019年3月12日閲覧。
  9. ^ “Somalia: Fighting between Puntland and Somaliland forces reignites in Tukaraq”. ガローウェ・オンライン (2018年5月24日). 2019年3月12日閲覧。
  10. ^ “Eight hurt as anti-Somaliland rally in Las Anod turns violent”. ガローウェ・オンライン (2018年5月28日). 2019年3月11日閲覧。
  11. ^ “Somalia: Puntland-Somaliland Tension and its political effects”. ガローウェ・オンライン (2018年2月2日). 2019年3月12日閲覧。
  12. ^ “Districts of Somalia”. Statoids.com (2013年12月9日). 2019年3月12日閲覧。
  13. ^ a b “President Riyale Names 6 New Regions + 16 New Districts”. Somaliland Times. 2016年3月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月12日閲覧。
  14. ^ “Gobolka cusub ee Xaysimo (ExTaleex) oo Badhasaab loo magacaabay”. gobanimonews.com. 2017年2月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月12日閲覧。
  15. ^ “Siilaanyo oo Magacaabay Todobo Degmo oo Cusub”. en:Horn Cable Television (2016年7月14日). 2017年2月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月12日閲覧。
  16. ^ “Madaxweyne Siilaanyo Oo Tuulada “Bohol” u Magacaabay Degmo”. Xogshiil Media (2017年10月2日). 2019年3月12日閲覧。
  17. ^ “Five Regions In Northeastern Somalia Form Government”. Biyokulule Online (1998年7月24日). 2019年3月12日閲覧。
  18. ^ “Somalia: Las Anod clan elders 'give up' on Puntland govt”. ガローウェ・オンライン (2008年1月8日). 2013年12月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月12日閲覧。

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、スール州に関連するカテゴリがあります。
ウィキボヤージュSoolに関する旅行情報があります。
  • Administrative Map of Sool (PDF)
ソマリランドの旗 ソマリランド 1
独自の行政区画
プントランドの旗 プントランド 1
独自の行政区画
ガルムドゥグの旗 ガルムドゥグ
ヒーシェベリの旗 ヒーシェベリ
バナディール州の旗 バナディール首都地域
南西ソマリアの旗 南西ソマリア
ジュバランドの旗 ジュバランド
その他の自治政府
1 ソマリアからの独立を宣言し、現在も事実上独立状態にある。また独自の行政区画を設置している。なおプントランドはソマリア政府へ協力的な態度を示している。
2 プントランドが領有権を主張し、一部を実効支配している。両国の紛争地域で、通称はSSC地域。詳細はプントランド・ソマリランド紛争を参照。