2023年ドニプロの集合住宅へのミサイル攻撃

2023年ドニプロの集合住宅へのミサイル攻撃
2022年ロシアのウクライナ侵攻における民間人への攻撃(英語版)
ミサイルが着弾した後の集合住宅の様子
場所  ウクライナドニプロ
日付 2023年1月14日
攻撃手段 ミサイルの発射
武器 巡航ミサイル
死亡者 少なくとも40人
負傷者 75人
犯人 ロシアの旗 ロシア
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2023年ドニプロの集合住宅へのミサイル攻撃(2023ねんドニプロのしゅうごうじゅうたくへのミサイルこうげき)は、ロシアのウクライナ侵攻下にある2023年1月14日に、ウクライナドニプロにある集合住宅に対して行われたミサイル攻撃。同日はウクライナ各地に攻撃が行われ、多くの死者や被害が出ており、『BBC』はドニプロへの攻撃について「ここ数カ月で最悪規模の被害となる」だろうと評した[1]

攻撃

2023年1月14日、ウクライナ軍参謀本部は「ロシア軍はウクライナの重要なインフラ施設に対してKh-101/Kh-555、Kh-22航空巡航ミサイル、カリブル海上巡航ミサイル、Kh-59誘導航空ミサイルといった高精度兵器を使用した。」「敵は様々な巡航ミサイルを約28回発射し、誘導航空ミサイルを5回発射した。」「18発の巡航ミサイルと3発の誘導航空ミサイルがウクライナ空軍によって破壊された。」と主張した[2][3]。当時ウクライナの大統領府顧問を務めていたオレクシイ・アレストビッチも自身のyoutubeチャンネルで「飛来した33発の内の21発が撃墜された。」と主張した[4]

またウクライナ国家非常事態庁は、ロシア軍が発射したミサイルが、ウクライナ東部ドニプロペトロウシク州ドニプロの9階建て集合住宅に着弾したと主張した[5][6]。非常事態庁は、このミサイル攻撃により、子供3人を含む40人以上が死亡し[6]、負傷者も75人に上ると主張している[7]。また同国報道官は、攻撃に使われたミサイルが、長距離爆撃機から発射された巡航ミサイル「Kh-22」だと主張している[8]

反応

ウクライナの大統領ウォロディミル・ゼレンスキーは、15日夜の演説の中で「ドニプロでの攻撃を前に、あなた方は臆病風に吹かれて沈黙している」とロシア国民に向けて語った[9]。ウクライナの隣国であるポーランドの現行首相マテウシュ・モラヴィエツキは、「非人道的」であり「ロシアは民間人に対する戦争犯罪を意図的に犯し続けている」と非難した[10]。エストニアの首相カジャ・カラスも「ロシアはテロ国家であることを改めて示した」と述べた[9]。当のロシアは、今回の攻撃がウクライナによるものであるとし、自国軍の関与を否定した[5]。ロシア国内では、モスクワのレーシャ・ウクライーンカ像に花やぬいぐるみを供え、今回の攻撃による犠牲者を追悼していた市民4人が拘束された。一方、ウクライナ大統領府顧問のオレクシイ・アレストビッチは攻撃同日に「ロシアのミサイルを迎撃したが、集合住宅に落下した」との推測を述べ[4]、ウクライナに責任があるというロシア側の主張に肩入れしてしまうことになった[11]。これに対し、ウクライナ軍参謀本部はロシア軍から発射された33発の様々なミサイルの内の21発を迎撃したと発表したが[2]、ウクライナ空軍司令官ミコラ・オレシュク中将は現段階でkh-22を撃墜する事は不可能だと述べ、防空ミサイルによる撃墜を否定した[12]。ウクライナ国民からは、アレストビッチの発言がロシア側のプロパガンダに利用されるとして怒りの抗議が上がり、アレストビッチは一旦は発言を謝罪した。しかし15日には自身のFacebookで「元防空部隊だった私の友人は、着弾当時に道路を歩いていました。彼は私に、2回の爆発音を100%聞いて、最初の爆発は防空によるものだと特定したと語った。これまでの所、彼は間違っていなかったので私はミサイルが防空によって撃墜されたと確信した。」「当時の私は発言に留保を入れた。防空ミサイルについて、私はまだ検証が必要な仮定を述べただけだ。」と主張し謝罪を撤回した[13][14]。これによりウクライナ最高議会は更に批判を強め、アレストビッチは17日に辞任を表明した[15]

また、国際連合安全保障理事会はこの攻撃を受けて17日、公開会合を開催した[16]

  • フランスの旗 フランス - 同国国連大使ニコラ・ドリビエール(英語版)は「ロシアの攻撃を断固非難する」と強く主張した[16]
  • 日本の旗 日本 - 同国国連大使石兼公博は「侵略を即刻中止すべきだ」と述べた[16]
  • アルバニアの旗 アルバニア - 「1トンの弾頭を搭載したミサイルによる残忍な攻撃だ」と非難した[16]

会合内でのこれらの批判に対しロシアは「ミサイルはウクライナ側が住宅地に配備した防空網によって迎撃され、集合住宅に落下したものだ」と反論した[16]

脚注

  1. ^ 「ロシア軍、ウクライナ各地に新たなミサイル攻撃 集合住宅やエネルギー施設に着弾」『BBC NEWS JAPAN』、2023年1月15日。2023年1月18日閲覧。オリジナルの2023年1月17日時点におけるアーカイブ。
  2. ^ a b “Генеральний штаб ЗСУ / General Staff of the Armed Forces of Ukraine”. facebook. 2023年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月25日閲覧。
  3. ^ “Ворог запустив по інфраструктурі України 33 ракети, 21 з них збили – Генштаб ЗСУ”. gordonua. 2023年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月25日閲覧。
  4. ^ a b “Арестович & Фейгин: 325-й день войны. 14 января”. youtube. 2023年9月25日閲覧。
  5. ^ a b 「露軍集合住宅攻撃、死者40人に 30人が下敷きか ウクライナ」『毎日新聞』、2023年1月16日。2023年1月18日閲覧。オリジナルの2023年1月18日時点におけるアーカイブ。
  6. ^ a b 「露のウクライナ集合住宅攻撃、子供含む死者40人に(1月17日)」『毎日新聞』、2023年1月17日。2023年1月18日閲覧。オリジナルの2023年1月17日時点におけるアーカイブ。
  7. ^ 「集合住宅攻撃、死者40人 破壊力大きいミサイルか ウクライナ」『朝日新聞デジタル』、2023年1月17日。2023年1月18日閲覧。オリジナルの2023年1月18日時点におけるアーカイブ。
  8. ^ 「ロシア軍が各地にミサイル攻撃 ドニプロで子ども含む21人死亡」『毎日新聞』、2023年1月15日。2023年1月18日閲覧。オリジナルの2023年1月17日時点におけるアーカイブ。
  9. ^ a b 「ロシア軍が住宅地を無差別攻撃か、子ども含む35人死亡 ウクライナ東部・ドニプロ」『東京新聞』、2023年1月16日。2023年1月18日閲覧。オリジナルの2023年1月16日時点におけるアーカイブ。
  10. ^ 「ロシアの攻撃受けた集合住宅、死亡・行方不明74人 ウクライナ東部ドニプロ」『BBC NEWS JAPAN』、2023年1月16日。2023年1月18日閲覧。オリジナルの2023年1月17日時点におけるアーカイブ。
  11. ^ 「集合住宅攻撃で責任逃れ 「軍事施設」「ウクライナ原因」―ロシア」『時事通信』、2023年1月17日。2023年1月18日閲覧。オリジナルの2023年1月17日時点におけるアーカイブ。
  12. ^ “Арестович пояснив свої скандальні слова про російську ракету в Дніпрі”. BBC. 2023年9月25日閲覧。
  13. ^ “Арестович вибачився за скандальну заяву про Дніпро, а потім передумав”. 2023年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月25日閲覧。
  14. ^ “Олексій Арестович написав заяву на звільнення після «принципової помилки»”. Детектор медіа. 2023年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月25日閲覧。
  15. ^ 「ウクライナ大統領顧問が辞任 集合住宅へのミサイル攻撃めぐる発言で」『BBC NEWS JAPAN』、2023年1月18日。2023年1月18日閲覧。オリジナルの2023年1月18日時点におけるアーカイブ。
  16. ^ a b c d e 「集合住宅へのミサイル攻撃、安保理で非難相次ぐ…ロシアは反論「ウクライナ側の迎撃で落下」」『読売新聞オンライン』、2023年1月18日。2023年1月18日閲覧。オリジナルの2023年1月18日時点におけるアーカイブ。

関連項目

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